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プロジェクト

総デジタル化社会に向け商社にできること
ー商品データマネジメントの取り組み

ーーーー今回は理化学バイオ業界の商品マスタ管理の取り組みについて、リカケンホールディングス ストラテジーインテグレーショングループ データマネジメントチームの中井さん、景山さんにお話を伺います。まず最初に、お二人の日々の業務について教えていただけますか?

景山: なんでも聞いてください。
中井: さすが。
景山: 部長がそう言えって(笑)。
中井: なるほど(笑)でも自信もっていいと思いますよ。ここ数年でかなり変わりましたから。

景山: そうですね、我々が一番大切に思っているのは、エンドユーザーである研究者の方々に革新やひらめきをもたらすことです。そこで主業務である商品カタログのデータ整備においては「品揃え」にこだわっています。
中井: 研究職というのはある種、特殊な仕事だと思っています。そういった方々が研究に必要なアイテムを気軽に探せるサイトという事を考えると、売れ筋や定番の商品だけでなく色んな商品を閲覧できる事が必要なのではないかと思っています。


ーーーーマスタの「品揃え」ですね。具体的にはどれぐらいの数があるのでしょうか?

景山: 現在、約100メーカー、2,000万件の商品データを管理しており、そのデータを基幹システムやWebカタログ、購買サービスに活用しています。


ーーーーそれはすごい! お二人はそれをどのように管理しているのですか?

景山: 私の方では、メーカー様から商品データを取得し、それを情報更新するために一度全ての情報を社内標準データとして作成しています。
中井: 私の方は技術的なサポートが多いです。この業務体系の基本設計をしたのが私で、現在はそこで使用しているツールやプログラムの運用改善についてツール開発に携わってくださったパートナーベンダーとの連携を取りながら改善を進めています。


ーーーーなるほど。お二人がそれぞれの役割を果たしながら業務改善、デジタル化を進めていらっしゃるという事ですね。データ管理についてもう少し聞かせください。景山さん、2,000万件もの商品データの管理はとても大変じゃないですか?

景山: 大変です(笑)。基本的な商品マスタのほかにお客様が必要とする商品詳細や法令情報なども一元管理しています。元データは表記もレイアウトも各社で異なるので我々のデータベースに合った形に変換する必要があります。


ーーーーメーカーさんはデータの基礎となる構造化データを持っていないのでしょうか?

景山: もちろんほとんどのメーカー様は構造化データを所有していますが、社外秘のデータが含まれることが多いので開示には適さないそうです。そのため開示用に情報を編集して頂けるのですが、時に更新データが前回と異なる並びで届く事があります。例えば品番と定価の位置が逆になると私たちのWebカタログや受発注データも表記が逆転してしまうので気が抜けません。
 
図:商品データ管理のワークフロー


ーーーーなるほど。商品データをただ貰うだけではなく、取捨選択や整理もしないといけないんですね。

景山: はい。我々がメーカー様のデータを勝手に書き換える事はできないので、お客様のニーズに合った情報を提供するには、どうしてもメーカー様に一定の品質でのデータ提供をお願いしたりするので、その調整や連絡が非常に大変ですね。


ーーーーそれをお一人で!膨大なデータを扱いながら、色んなメーカーさんと連絡を取り合い、さらに中井さんとの連携。それは大変ですね。では中井さん、景山さんのお話に対して、どのようなアプローチを?

中井: 景山の苦労を横で見ています(笑)冗談はさておき、システム的なアプローチとしては、私が見ている景山の苦労を、あの手この手で可視化することにつきます。


ーーーー可視化とは具体的にはどのような事ですか?

中井: まず手作業でのデータ処理を極力避け、このメーカーさんのファイルは「どのような手順で処理する」といった定義ファイルを作成することにより、データ処理を自動で行うシステムを構築しました。作業内容やデータを処理する際のルールをクラウド上で共有し、変更履歴を残す事で、改善サイクルを作っているわけです。


ーーーー(定義ファイルやルールブックを見て)細かいですね!これが100メーカー分あるんですか?

景山: はい、メーカー様からいただいたデータを我々の標準フォーマットに変換する箇所について、それを修正する方法を全て記載しています。
中井: この数だけで景山の苦労が一目でわかりますよね。定義ファイルの数だけ時間や労力を含めたコストが増えていきます。このように何がコストを膨らませているのかを可視化し、上長をはじめとしたステークホルダーと情報共有する事で、管理業務に対する理解と改善の意識を持ってもらう事も狙っています。

景山: あと定義やルールが減れば、後任者が配属された時のキャッチアップも速くなります。業務継続性の観点からそこもかなり重要に考えていますね。我々も決して若くはないので(笑)。
中井: それまでに商品データフォーマットが1つの世界標準にまとまればこのような作業は不要になっていくのですが、まだまだ先の話ですね。



ーーーー貴重なお話ありがとうございます。データ操作という完全デジタルの業務に携わられているという事で、DXについてもお伺いしたいのですが、何か力を入れた取り組みはありますか?

景山: そうですね。この数年で特に意識したのは、やはりDXによる業務効率化です。インタビュー記事としては面白みのない回答ですが、業務効率化は全体のパフォーマンス向上に直結しているため意識しない訳にはいきません。


ーーーーなるほど。例えばどのような取り組みでしょうか?

景山: データベースに社内標準データを格納する作業や、データベースから社内システムにデータを送り込む作業の一部をパートナーベンダーに外注依頼しています。この時、ただ丸投げするのではなく、チケット管理ツールを使って外注依頼を全て一元化し、元データと対応する定義ファイルを一括管理しています。


ーーーールールブック、相当な数と種類がありましたよね?

中井: そうなんです。これだけ細かいと外注するより個人で作業した方が早いと思いがちですが、それでは属人化が進み、個人に負荷が集中する状況は変わりません。それを回避するためにデジタルツールを活用して効率化できないかと考えたわけです。

ーーーーシステム的なアプローチからスタートしたんですね。すごくDXっぽいです。

中井: それで最初期から我々だけなく、パートナーベンダーも交えて準備を進めていたのですが、そこでコロナ禍が始まってしまいました。関係者全員が急に在宅勤務となり一時はかなり不安でしたね。


ーーーー私も急に仕事が止まったり、案件がなくなったり、大変な思いをしました。

中井: そうですよね。ですが大変な中にも、これはDXを加速させる大チャンスなんじゃないかという意識が次第に芽生えてきました。会社がすぐにリモートワークの体制や、業務ツールの拡充を決めてくれた事が大きかったと思います。
景山: 平時であればツールの導入も慎重になり、早期導入も難しかったかもしれません。ツールや業務の切り替えには様々なリスクが伴うことは承知の上でコロナ禍という未曽有の危機を共に乗り越えようと、社内外の皆さまと協力できたのが追い風になった気がします。


ーーーー連携プレイでピンチをチャンスに変えたんですね。他にも聞きたいことが沢山あるのですが、お時間にも限りがあると思います。最後に、これから先の取り組みや今後の展望などお聞かせください。

中井: ここまでやってきたDX。データ整理の知見や効率化のノウハウを、チーム外にも広めていく事で「データの民主化」を実現したいですね。


ーーーー「データの民主化」は何を意味していますか?

中井: 簡単に言えば、誰でもデータ操作ができる状態を目指すことです。AIやクラウドツールの進化によって、エンジニアでなくとも、高度なデータ操作が可能になりつつあります。そこで必要になってくるのが、誰もがデータの仕組みを理解できる環境や状態を作ることだと思っていて、すでに様々な取り組みを始めており、今後もさらに進めていく予定です。
景山: 私は現在の業務をさらに安定させて、商品データの質を上げたいと思っています。中井の言う「データの民主化」を実現するには、量だけでなく質のアップも重要です。そうしたデータを社内外で活用してもらえるようになれば、研究者の方々に革新やひらめきをもたらす、より有意義なサービスが増えていくと思います。


ーーーー期待しています。これからも、お二人それぞれの役割を果たしながら素晴らしい連携プレイでがんばってください。ありがとうございました。

二人: ありがとうございました。